坂道と少年。/
田中宏輔
少年は振り返って
坂道を下りてくる
腕は太くなり
胸は厚くなって
少年は、少年を越えた日に
坂道を下りてくる
そのとき彼は
大樹の陰に見るだろう
幼かった日の自分を
輝きに満ちた日を
懐かしいときを
世界がまだ自分より
ずっとずっと大きかった
あの頃を
あの日々を
あの夏の日を
夏と
少年と
白い坂道
ぼくのなかでは
何もかもが輝いていた
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