さずかりもの/本田憲嵩
 
ゆうぐれ、ぼくの家のすぐ目の前にある小さな公園、だいぶ涼しくなってきた風、古いブランコがほんのすこしだけ揺れている。その座板のうえに置かれている、子供用のリコーダーには、しかし老いの枯れ葉が何まいも詰めこまれている。その笛の音は夕餉の四角い食卓のまえで、とてもたどたどしく、通常ならばごくありふれて発せられる挨拶のひとつであるはずなのに。
そんな、さびしいメロディーのように惚けてしまったひとのことを、いまさらながらに考えている。


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