Ｃ賞授与式と呪文/
ＡＢ(なかほど)
わすれもの
わすれたままに
しておく呪文
ときどき きれて
おもいだす
エアコンの効き過ぎたホールの
化粧の芳香と二の腕にむせながら
逃れた駐車場の隅に
朝顔にとられるつるべもなく
埋められた井戸の側には
しろつめくさの三つ葉と
蟻の行列
じりじりと残暑の陽の向こうからの
蜻蛉の声も届かぬうちに
ジジジと鳴いて授与式が終わる
呪文はきれた
おもいだした
とっくに思い出していた
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