快楽を乗せて/ただのみきや
 

異質なもの
不気味なもの
なまめかしく
美しく
無邪気で残忍
なにもわからない
わからないから引き付けられる
わかったふりして指差し笑う者もいる
わかったことにしたくて理屈をつけて

わたしは荷車について語らない
その轍についてあれこれ話すことも
荷車の上にあるもの
それについて話したい
比喩こそ本質
事物は表層の暗い包み紙にすぎない

  *

風がよそよそしい
裂けたシーツのような日差しの中
夢の油膜にふくらんだ目で
ゆれるブタナを食んでいる
 失くしたものを数えようとして
なにも思い出せず
なんどもなんども
折っては開いた千代紙のように
 顔を失くした集合写真
鏡の中の自分すら捕まえられず
かすめる羽音にうなじをあずけた
快楽 片言の



                 (2023年6月10日)









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