快楽を乗せて/ただのみきや
落胆を胸元からのぞかせて
あやめ色
切る風もなく
地をつたう眼差しに
まろぶ木漏れ日
翅ふるわせる
仰向けの蝉の腹は白く
罌粟のつぼみ
空き家の庭でふくらんで
子音がとける死んだ子の
唇に 指をあて
見開いては溺れ
瞑ったまま取り残される
磔
の
夏
は まだ雲に隠れて
樹液は祈る
青白く倒れた人の口に活けられて
ボタンだらけの影の蛇腹を
撫するように奏でていた
笑いが屋根をつたう
鳥たちに啄まれながらも
激しく苦しく?み殺すように
*
比喩こそ本質
事物は表層の暗い包み紙にすぎない
新聞紙でつつまれた生肉
わたしの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)