神飾り/ミナト 螢
ピアスの穴が2つある
どちらも好きなバンドが出来た時
何か印になるものが欲しくて開けたのだ
好きなものが出来ると
生き方が前向きになるし
傷口に塗り込むマキロンは
僕にとって夏の匂いだった
ライブに行く前日に開けた穴が
生々しく赤くなり
Tシャツを脱ごうとすると
耳たぶが擦れて痛かった
希望しか見えない瞳で
鏡に映るピアスを
確かめて笑う日々だった
安っぽいピアスの輝きを
疑うことも知らずにいたけど
東京で働くようになって
本物に触れることが増えた
それでも
失敗した安物のピアスは
机の引き出しにしまって
大人になったんだ
どんなピアスを
付けるかも大切だけど
何もしない日に
光や音が
ピアスの穴を通る気がして
髪の毛を耳にかけたりする
戻る 編 削 Point(4)