べにいろ/リリー
花の時がすんで
雨の時が来
山の青く美しい時がすんで
薄墨にけむる時が来
それでも あなたがそばにいてくれると
私の心は
ブラインドカーテンから差し込む朝の光に
床をころがるビー玉の様で
壁にぶつかれば
あなたはそれを拾うでしょう
だけど本当は分かっているのです
雨の朝 ヘアアイロンで伸ばしても外へ出れば
たちまち膨れる癖毛のセミロングは束ねるしかなくて
時に
そんな髪さえ重たいと感じる季節だと
中古マンションが建ち並ぶ石畳の小道
一階の鉄柵から垣間みる
ひたすら降りこめる小さな庭の紫陽花が
紅なのです
滴をうけて紅なのです
滴の中まで紅なのです
人の絶えた 時の狭間で一人
梅雨をむかえた目の前の紫陽花が頭を垂れて紅なのをみる
私の心は
どこまでも虚しく清い童女なのです
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