黒い光輪。/田中宏輔
 
かに開かれた。
彼と同じように磔になった男のひとりが彼の横顔を見つめていた。
もうひとり、彼の脇に、彼と同じように磔になった男がいたが
もはや彼には首を動かす力もなかった。
磔柱の傍らでは
汗まみれ、泥だらけのローマ兵たちが
サイコロ遊びに打ち興じていた。
襤褸布の塊のような灰色の犬が
見えない目で、真ん中の磔台の男を見上げていた。
犬の目はふたつとも色を失っていて、石のように固まっていた。
突然、俄にかち曇り、一陣の風が吹き荒れた。
砂という砂が、風に巻き上げられた。
真昼間に、太陽は光を失い、夜となった。
「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ。」
男が暗闇のなかで叫ん
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