夜に噛むために/AB(なかほど)
 
  

僕が森に行くのは
そこに隠れている夕焼けを
あの日の夕焼けを見たいからで
森に行けないときは
こうして目を閉じている
できれば
君の息が聞こえるくらい静かな場所で
静かな気持ちで目を閉じている

終わる音



あわてたような目をして
あなたが横を向くので
あたしは
今日もあらぬものを噛んで寝るの
それなりの物わかりのついた
ふうな目をしながら

プラスチックのコップとかスプーンとか
どうして捨てられないんだろうと
あなたががもらしたけど
あたしもそう
握りしめたものを確かめるように
無くしたものを確かめる



僕が森に行くのもおそらくそんな理由で
どうぞ撫でていて下さい
子供のように、母のように、恋人のように、
猫のように、
君にもあの日の夕焼けが滲むまで

そんなふうにして眠りに落ちるまで



  
  
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