グラデーション[まち角2]/リリー
僕の隣に立つ女は長身でショートカット
切れ長の吊り目が奥二重
パーマのかかった短いまつ毛
手に布製のブックカバーを持っている
ああ、どうして彼女は
こんな下地の色に淡雪の様な小花散らす
ブックカバーを持っているのか
色彩的な風合いやイメージの柔らかさを
カラーネームで表現するのは芸が無い
と、
思ったばかりに悩まされている
もどかしい気持ちのままJRの車輌降りると
駅裏のバスターミナルで人混みに見る
厚地の細長いストール
その時 僕の目に
甃から伸びた鉄柱との隙間に生える
シダ類の雑草がとび込んできた
紛れもない、この葉っぱの色だ
指先で まだ赤ちゃんの葉先に触れてみる
さっき車輌で吊り目の女が持っていた
ブックカバーの色はスプリンググリーンではない
初秋あんな所から生えた雑草の吾子が見る夢だ、
そんな色なのだと言えば誰に
分かるのだろうか
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