サンドイッチマン/本田憲嵩
風きた、って、また磁石のように身体の方角をかえて、とりあえず俺もう行くから、って、彼はそのまま公園をあとにした。彼は自分の身体をひどく労わる男なんだ、とぼくはこのときようやく理解した。
駐車場へともどり車に乗り込み、ぼくも公園をあとにした。爽やかな風が吹き込んでくる窓を開けはなった車内で、土曜日の午後担当の、ローカル局のラジオのパーソナリティが、ローカル局のパーソナリティとはとても思えないような、その巧みな話術で怪人のことについて熱く語っている。
あ、風くる、風くる、って。
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