サンドイッチマン/本田憲嵩
あ、風くる、風くる、土曜日の公園で急に磁石のように方角をかえて真鴨の黄色いクチバシのように極端に長い、先の尖ったヘルメットが思わずぼくの眼球にぶつかりそうになる。そんな被り物をした一人の中年のメガネ男がいまここにいる。彼が言うにはそれをかぶると風の抵抗がとても少なくなるのだという。はじめての痛風はたしか十代のときで、今はちょうど第二十三期痛風ブームが来ているのだという。そればかりかちょっとおまえも被ってみろという。お前も気を付けなきゃダメだぞとひどく余計な心配をしてくる。遠慮するぼくの頭にそれでも彼はなかば強引にそれをかぶせてきて、あ、ほらほら、風きた、風きた、先端向けてみろ、って、ぼくはしぶしぶ
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