曇天の城/
リリー
灰色の空に
厳しい線を画いている古城の天守
何百年の年を支えてきた様に
あなたは私へ
愛を 支えようとしてくれている
それなのに
私は人の心を
見つめられ
ない
わたしの
動きも
意識
できない
目的なく
崩れても
崩れても何を希んで波打ち際に築くのか
砂の城
それでも 今、
柔らかに芽を出した樹々達の息づく行方のない拡ごりに
雲がとび
心災わさず
何気なく
童女の様な安らかなよろこび
目には
あなたと仰ぎ見た
曇天の平城だけが実在している
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