CERN/本田憲嵩
 
報音と電車の通過する擦過音がつめたい凪いだ風にのって聞こえてくる。あのときのCERN一連のできごとがなんども水面に映像としてくりかえし再生されてゆく。ぼくはCERN草むらからその白い衛星を拾い上げ、それを夕暮れの水溜まりへとCERN殴りつけるように投げ込んでみる。なぜならばLHC彼女は海の見える駐車場でおそらくはマルボルでも吸いながらCERN彼女の宇宙船のコックピットにまだいたはずなのだから。そのうわくちびるのうえ、ひとつの、ちいさな、ブラックホールを浮かべながら。
草むらから黒猫が道路へと歩みでてきてニャーと鳴く。CERN。


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