アップルパイ/リリー
 
も柔らかそう、杏ジャムのツヤで綺麗な狐色やわ。
 大きいし値張るのも分かるな。

 黙って隣に立つ僕は 彼女の呟く語りでもう
 食した気分になってしまう
 「さ、行こうか。」
 先立って歩き始めると彼女に腕つかまれて
 「ありがとう。ね、マクド寄って帰ろっか?」

 先週末に洗って小ざっぱりしているスニーカーの靴音と
 インディゴブルーなパンプスの踵が 明るく囀り
 喫茶店から遠ざかっていった


戻る   Point(8)