ベルゼバブ。/田中宏輔
 
りました。ベルゼバブさまは、立ち上がられて壁のすぐそばまで寄って行かれると、その壁面の模様を、しばしのあいだ眺めておられましたが、突然、なにかを思いつかれたかのように、その壁面を指さして、机のある方に向かって歩き出されました。それで、わっしらは、その合図にしたがって、切り刻まれた女の死骸から離れて、血まみれの壁の方へと向かって、飛び立ったのでございます。



注:引用された短歌はすべて斎藤茂吉のものである。

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