死者の数だけ歌がある/ただのみきや
よく聞こえる耳はいらない
なんでも見分ける鋭い目も
もっと聞きたいと思うこころ
飽きることなく見つめてしまう
忘我の時をいつまでも
得ることは失うこと
あらたな構築と古きものの破壊
たえず秩序と混沌に引き裂かれ
矛盾を映して鏡をぬらすもの
円環に抗ってねじれてゆく螺旋
翅の裂けた羽虫のように
時間に急き立てられて
痛む足を引きずりながら
雀のおしゃべりにどこからか出血して
角氷一つ分夜を隠蔽する
幸福に殴られてぺらぺら捲れてゆく
自分によく似た人たち
神の時限爆弾と書かれた札が
どの首にもかかっていた
無意識にも流行りはある
風が隙間からこじ開ける
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