干し草/たもつ
私が私について語っている時に
兄が遠い県からやってきて
市民会館の職員と結婚した
つう、と言えば、かあ、なのに
我が子の名前を考えるのに夢中で、最後は
おまえに任せる、兄、つう
ラクダがいいよ、私、かあ
(私は世界ラクダ図鑑を眺めていた)
私の甥だか姪だかの名前は
ラクダになった
兄の家族は職員住宅に住んだ
ラクダが十八歳になったので
お祝いを包んで兄のマンションに行った
(三人は職員住宅を引っ越していた)
鯨偶蹄目ラクダ科の方のラクダが
出てきたらどうしようと思ったけれど
ラクダは女の子だったと
この時、初めて知った
私が私についての続きを語っている時に
ラクダが遊びにきて
結婚が近いことを告げた
(ラクダは大学を卒業し経理の仕事をしていた)
この名前、結構気に入ってるんだ、と
干し草を反芻しながらラクダは言った
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