わたしたち死ぬと甘く軽い生きもの/片野晃司
ことも、わたしたち軽くなって、楽しいことも、悲しいことも、ため込んだことも、吐き出したことも、ふわふわ、さらさら、わたしたち甘くなって、さらさらふわふわ、甘く口の中で溶けていって、わたしたちさらさらにあふれ出ていって、食べきれないのはふわふわ小鳥がつまんで食べて、残りは蟻がさらさら巣の中へ運んでいって、それでも残った粒はふわふわ風に乗って海辺までいって、さらさらと蟹が食べて、いわしが食べて、海に溶けて波の泡になって磯で砕けてふわさらふわさら飛んでいって。
詩誌hotel第二章2021年
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