だからもう一度、初演の舞台の中に/ホロウ・シカエルボク
 
物事については…絶対に―そんなの辛いだけじゃないか、なんて思うかもしれない、だけど言わせてもらえれば、空っぽの両手を肯定しながら周囲に迎合して生きるだけの人生は―この世で最も残酷な拷問のようなものだ、そんな世界に飛び込むくらいなら多少の苦難など問題にもならない、捨てることが出来ないものを持っている人間は絶対にそういう風に考えるものさ、運でもない、意地でもない、見栄でも、或いは自虐でもない、身体に張り付けるラベルが欲しくてそれを選んだわけじゃない、ただどうしようもなく、それが自分にもたらしてくれる世界が美しくてたまらないというだけのことなんだ…無数の記憶と共に世界を塗り替える、誰にも覚えることが出来ない名前をつけてあげよう、一生をかけて繰り返す自己紹介、自分自身の為の…余計な鏡はすべて叩き割ってしまえばいい、鈍い光をあちこちに反射する煩わしい瓦礫の中で、ようやく見つけたものに映る鏡像は、こちらを真っすぐに見据えたままにやりと笑うだろう。


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