薄 雷/
塔野夏子
春の遠くに薄雷が鳴って
さみしい とか
かなしい とか
形容しても詮なく
雨は降り
菫の花を濡らし
己が
いともたやすく傷つく
ということに
また傷つきながら春の長雨
形容しても詮なく
けれど形容しようとしてしまう
己の何処かをこわしながら
遠くに薄雷が鳴って
かすかに 傷と共鳴し
ゆるやかに諦めながら春の長雨
[グループ]
戻る
編
削
Point
(4)