湖の即興曲/リリー
 
 ベランダ打ちつける雨音
 レースのカーテン越し鳴り響くものが
 西の空も
 東の空も
 緋色 噴き上げ
 花火の様に開いていた
 湖に ぴかっと光った一線が在るだろう
 そこに連なる峰の優しさ
 リビングに居てみえないが
 それ故に 雨音の口ずさむ歌をきく

 昨日と今日との間は
 実は 無限に遠く 
 今でさえも、過去であるのだから
 いかずち
 遠退き 
 新たに思う春たつ日を。

        *

 湖が黒く泡立ち
 ただ 風が鋭く鳴り
 山がかき消されていく
 ふと目覚めた真夜中は限りなくいいものだ
 今も 未来もなく
 唯、思い出だ
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