磔刑/本田憲嵩
いつまでも直らない。おのが、おのの肉を喰らい千切る。とりあえず寒々とした部屋で、リュックを背負う、罪を背負う。12.5キログラム、を背負う。もう一度破壊して、また再合成するために、つよく太く束ねなおす。ためではない。けれども正当性、の水分を孕んだ筋繊維で、それは硬く大きく反発してしまう、パンプしてしまう、それはとても悪い癖だから、それはまだまだ過剰な獅子の肉であるから、磔刑、のための懸垂。
高騰、するばかりの、灯油。脂質のない、胸肉と、卵白。燃えている鬣の炎を消してゆけ、消してゆけ。そのためにも、まず、節制してゆけ。まるで炭鉱が閉山する前の冬の円筒ストーブの真夏のような暑さと、その燃える鉄空のような赤さは。日当たりの良い縁側で、嘗ての石炭の、つやめきのみを、その丸い小さな瞳に宿しながら、背中を丸めて、痩せ細って、ちいさな猫にしてゆかねば。嘗て過剰でもあった、燃える獅子は。
いつまでも、直らない。
とりあえず、
寒々とした、部屋で、
リュックで、背負う、
罪を、背負う、
12.5、
キログラム、を背負う、
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