いちごシロップ/fujisaki
 
いってもまた戻ってくるように
わたしは引き寄せられていく

どうしたい? と聞くわたしに
愛想をつかしてでていった
名前で呼ぶにはあまりに
みずみずしかった あの身体に
教えたかった 「どこへ行こうと
かるく握りしめるだけで
(いろはすみたいに)
ひねりつぶせるんだよ」
年上の スーツ姿になびいていった
大海で揺れるわたしの
いかだ
ペットボトルでできた
母なる海で浮かぶ
透明な乳房

色あせた政治家の顔
がひきつっている 一方通行の道を
どうして戻ってくることになったのか
こうえんの側溝に隠れていたときの気持ちで とうきょう
息をひそめ 
て いたの

突然
車が いきおいよく曲がってきて
わたしはひき殺されそうだった
心の奥底で 望んでいたこと
甘い死の香り
氷にかかったシロップ
月の無い夜に砂浜で聞こえてくる
声にならないのろい
背筋、伸ばして
しゃんとしなかんよ。
それは
わたしが生かされてきた
あたたかい
血のつながり
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