春雨詩織/ただのみきや
 
銀の絃まなうらに響き
吐息に狂う去年の蝶
苦味に触れてくちびる腫らし
ささえ切れずにいのちを散らす

わたしの生は福寿草の見た夢
風にそばだてながら
太陽のパン屑を拾う
土が乾くころ燕が来る前に
紙の獅子は羊水で溺れ死ぬ

雪解け水は走る
その背で光は遊ぶ
さざめき笑う鱗たち
春の股の間の裳裾を揺らして

ノートは白紙へ返る
進もうと戻ろうと
白い火に蝕されて
ことばが領土を失ってゆく
栞は蝶に
風にもつれて光にとけて

折りたたんだ影を開く
羽化しそこねた虫のように
非対称をもって自らとし
矛盾をもって答えとする

日々が爪繰られる
呼び
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