身の程知らず/
坂本瞳子
春だというのに肌寒く
しとしとと降る雨が桜を散らす
まだ咲き誇る姿を見てはいないのに
水分を含んだ枝は俯いている
薄紅色の花弁が川面を流れてゆく
灰色の空に月の姿はあらず
寒さが益々感じられる今宵
想い起こされる彼の人の笑顔は
なお一層に愛惜しく
別れたあの日もこれほどの
寒さだったかとふと
一筋の涙がこぼれ
いまやっと身の程を知る
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