孤独の形成/平井容子
1.夢のあわいにて
ホームベーカリーだけが
空虚をこねている午前4時
退屈した彗星が
1.5人分の足首をまたいでいく
死にゆくものたちが膨らませる
気球にのってそれを追いかけた
2.腐敗
しらむ空はつんとした水仙のにおい
色褪せた水色のバスタブに
蜂蜜色の湯がたうたう
あのころいくどとなく口ずさんだ歌も
いつのまにか思い出せない
あのころ親にせがんで繰りかえしみたビデオテープも
いつのまにか思い出せない
3.痛覚
服を着替えるようにとりかえた
いびつな3角形の傷が開いている
じぶんの体のどこかより
痛い場所があることを知ったペガサスは
夜明け前にはいなくなります
舟をこぎながら
またあなたに許されているわたしを残して
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