お気に入りの季節/藤原 実
 
鍵盤の上をいつもおくれてくる指のように
わたしはすでに取り残されてひとりで立っている

ビー玉を空に撒いたような
ボールパークの歓声に耳をふさいで

美しい惰眠をむさぼる緑色の猫の舌が
春の栞に
そっと触れる
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