読むことのスリル──ひだかたけし小論(4)/朧月夜
でしょうか? 心理主義の登場を待つまでもなく、ある個々人の関係性を示すときに、叙景というものは必要なものではありません。「二人」と言いながら、作者はすでに「世界」へとのその叙述を変更してしまっているのです。「昇った坂道/橙色に染まる/夕暮れに/奥まる時間を」というのは、明らかに叙景です。なんら、心理に対して変化をもたらすものではあり得ません。
ここで、この二人の関係性とは、「世界そのもの」への昇華を誘うものではないのか、という考察が生まれてくるのです。この詩の中では、二人の登場人物の愛と思いが、簡潔かつ精緻な言葉で綴られています。詳細を知るには、ぜひこの詩の原文を読んでほしいと思うのですが、こ
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