a drop/Monk
図書室で少女の視線の先には重たい本を持った少年
返却と、興味と、蒸せるような匂いと、
体育倉庫の黴びたマットからは埃が舞い上がったところだ
汗を吸ったタオル地と、粉にまみれる、呼吸困難
雷の鳴るグラウンドを部員達は全力で走っている
楕円を描き、繰り返され、体力は消費され、
白いカーテンのひかれた保健室で影が揺れている
椅子にかけられた白衣、寝息、開かれた目
3階の角の教室で今、教卓に体重がかけられている
金具はあまく、机の角は鋭く、やわらかく、そして激しい
鼓動すら圧迫され、壁と、壁と、壁が、僕には
ここからは何も見えない、聞こえない、はずだ
ギシリ、さらに体重がかけられる、音
揺れている、はずがない
雫がいまにも、透明な、雫が、
瞼を痛いくらいに閉じる
スピーカーが静寂を破る、男の怒声
「用のない人間は早く帰りなさい!!」
目を開けることができない
頭上のスピーカー、ギシリ、ギシリ、鳴り始めた
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