読むことのスリル──ひだかたけし小論(1)/朧月夜
のため、例えばブラックホールの内部のように、すべてが収束と秩序に向かう世界のなかにあっては、わたしたちが未来と思うものが過去として認識され、過去と思うものが未来として認識されるのです。……時間とはこのように、あいまいかつ流動性を持つものです。わたしたちが空間を自在に移動できるように、なぜ時間というものは自在に移動することができないのか? この問いに対する答えは、物理学ではなく、形而上学や哲学が与えてくれるものでしょう。「わたしたちは、時間という存在をつかみきっていない」──これが、現在のわたしたちの姿勢であり、限界です。
ここで、もうひとつ氏の詩を引用しましょう。
アスファルト割り
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