空から何かが/
岡部淳太郎
い夢のなかに落ちていった
人々はそんなふうに空から落ちて来るもののことを
脅えて過ごした男がいたことなど忘れてしまい
日々落ちて来る雨や雪や自殺者や桜の花びらをよけるのに懸命だった
私は待っている
私自身がこの星の重力に負けて 落ちてゆくのを
私は恐ろしい それゆえ
私の存在に脅えた男がかつていたのも当然のこと
もうすぐだ もうすぐ私は落ちて
この地にどんな人も体験したことのない災厄をもたらす
(二〇二二年八月)
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