白痴美返し/ただのみきや
 
生はうたた寝の夢
死は深い眠りに落ちること
起床ラッパで墓から出でる
そうでないならそれもまたよし


 辻に立つ風
  霧雨をまとい

 枝をくぐった
  ツグミの声に

 糸は絡まり
  耳目は遠く

 かすかに交わした
  額の熱 

 こころ鉤裂き
  涙腺なくし

 朝日に透けた
  煙の花の

 ページをめくる
  友の待ち伏せ

 玉虫めいた
  白痴美返し


自らを拐かした
青き尾のたゆたい
一枚また一枚と剥離する夢の油膜
雨の素描 刃こぼれは冷たく黒く



                 (2023年3月12日)







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