投函/あらい
『 いつかの雨で濡れたレンズを拭き取って
ある草藪の晴れた日に翳してみました
けれどやはりうつくしい櫻も霞んでいきました
あかあおきいろの紙風船は破けたままに
背表紙さえも色をなくし
タイトルとしての意味さえ見えず
いろとりどりのパンジーすら、
しおりの役目も果たさずにくすんで折りました
今日という一ページは破かれても
胸のうちに 一生色濃く 痕を遺していました 』
これは、これは、春の夜の夢を写し執る
「カガミヨカガミ」と。ドラマティックにも
日常に散らばる 或るヒトヒラのことで
波打ち際は足元を掬い、寄せては返す吐露で
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