まだ見ぬ春は/坂本瞳子
あんまりな寒さの中
夜空に舞い散る雪が
そうではなくて
桜の花びらだった
もう春がきたのかと
思うことは叶わぬほどに冷たく
このかじかんだ手を
どうにかしたいくらいだ
頬に吹き付ける風には
氷の粉が混じっているかのようで
いっそのこと凍えてしまえと
自らに言い聞かせたくなる
ここでこうして佇んでいれば
朝がやって来て
すべてを暖かに
包んでくれるだろうか
いやそんなことはないだろう
あんまりな寒さの中
思考がずれているようだ
春はまだ先なのだから
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