バンドマン帰らず/ただのみきや
リーゴーランド
象形が裂けた──擬態する何かが頭にめり込んで来る
抱いているのは奇形のサボテンか
イクラとナッツが零れ落ちる開いた鳥の遥か彼方
恐怖は無表情のまま一点の釘痕を見た
鏃──ずれてゆく時代の断層からさかしまに
かの清掃夫に挑み続ける汚れ滴る染みとして
わたしは矛盾という双子を妊娠した
イタリア人のアコーデオン弾きが海にパイプを落とした日
すべての抽斗が空っぽの日食と情を交えたのだ
月の観覧車が早くなるほど齧られて薄くなり
わたしは食い破られる 回転する光の環
耳元に潮は満ち
素足を舐る未来の残滓が泡沫に映り込む
つるはし一本 地獄への突貫工事
二色刷りの父性が赤子にもどるころ
乳房の代わりの煙草が天の尻をくすぐっている
(2023年3月4日)
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