春の訪れ/なつき
 


君よ、好きだ

透明な悲しみの切々と降り積もる宵に
君の笑顔をいつか焼き付けたなら
そう思って
絡まって
転んで
立ち上がって
またしくじって
それでも折れずに
まだ行ける
まだやれるって

俺は頑固で
君は綺麗だ
そんなこと
出逢った時から
知っていたよ

風が凪いだ
もうろくした曇天模様
俺は膝小僧を擦り剥いて
子供のように笑う
忘れていたんだ
笑顔なんて
久しく作っていなかったから
君となら笑顔でいられるから
そんなに楽しい話はないと思って

抱き締めて
折れ重なって
勇気なんてなくても
まだ生きていられると知って
俺はようやく
大人になれた気がした

ぐるぐると脳天が回る感じ
これも大人の恋
いつか愛に変わったら
その時はふたりでお祝いしようか

この冬最後だろうか
東京にも崩れかけの六花が舞い降りた
己の涙も、こんな時にはカムフラージュできるから、便利だ
はじめて、外で手を繋ぐ
君の髪を後ろで束ねてやると
そうっと笑ったから
耳の後ろにキスをした

もうすぐ、春だね
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