恋情/ただのみきや
 

一滴の甘露にも溺れてしまう
ああ万華鏡へ身投げするマイナス100℃の花束

蟻たちよ海を渡れ狂おしく渦巻き溺れながら
必ず訪れる静謐の前の叫びとなり
涼し気なかもめたちの涙腺でこだましろ
栓の抜けたこころが異音を放つ時
口いっぱいに広がる告白があふれることはない
手も足もなく飲み下されて酸い
酸いからこそ甘いとろけるほど
脳を噛みしめているただれるほど
無邪気に残酷に水槽いっぱいに育ってしまった
一匹の金魚がそれだ
燃えるような恋の衣装を着た孤独の極みがそれだ

ぎこちないほほ笑みで内から裂けてゆく
没したままの太陽が唇を羨んで
凍った瞼が黒地に青く描き出す柘榴が重い秘密を耳が千切ったまま



                         (2023年2月18日)








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