残像を踏み締めて/猫道
朝 急いで自転車を走らせ駅前の駐輪場へ
このまま行けば遅刻は免れそうだ
すぐに駅ビルの通路に飛び込もう
と思ったその時
目の前を見知った顔が通り過ぎる
右足が急停止する
ドキッとする
そっちに進むわけにはいかない
少し回り道をして
しかし大急ぎでホームに向かう
別れてからとった連絡といえば
一緒に住んでいた部屋に設置したエアコンに
撤去費用がかかることへの愚痴とか事務連絡で
やがてはそれも途絶えた
彼女は時折スマホの予測変換に出てくる幽霊になった
でも同じ街に住んでいるからこうしてばったり会っ
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