犬の前で/
soft_machine
犬といる午後
肉がざわめく
灰いろのひろがり
この部屋で
許しがあったことはなく
交わす偽り
弾ける肉声
どこからが贖いなのか
どちらが生なのか
知る迷いはない
痛みに刻まれる
おさない悲鳴に怯える
耳の記憶
違う
悲鳴ではなかった 笑顔だ
いつも心から笑い
あなたが泣いたのは
犬の前
犬の前でだけ狂い
北の諸島へ羊を追って
犬とふたり 泣きながら
海の轟に
指を咥え
今も放さないあなた
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