手/
大覚アキラ
乱暴に払いのけた手
固く握り締めた拳になっても
殴りつけるものさえ見当たらず
この遣り場のない気持ちと
同じ形のまま
中途半端に宙に浮いている
ほんのさっきまで
この手の中に
その柔らかな
あなたの手があったなんて
まるで嘘のようで
もうたぶん
二度と結ばれることのない
あなたの手を
ただ黙って眺めている
長い沈黙のあと
遣り場のない気持ちと
殴るものもない拳を
ポケットに突っ込んで
どちらからともなくドアを開けて
あっけなく終わる
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