ある日、なにもかも塵のように/ホロウ・シカエルボク
 
俺はただ彼女に付き添っているだけだった、けれどなんていうか、こうして一緒に過ごしてみると、いけ好かない感じはまったくしなかった、彼女が美人である故の、俺の偏見のようなものだったのかもしれない、時々は笑ったりもする、普通の女だった、まあ、意識不明の男をアレする一面はどうかと思うけれど―そんな生活が二週間ばかり続いた、そして、それは俺の異変の始まりと同じように突然終わりを迎えた、俺、どうやら死ぬようだ、俺は直感をそのまま口にした、台所を片付けていた女は一瞬ピタっと止まり、そう、とだけ返した、「残念だ、元に戻れたらなにかお礼をしたいと思っていた」「まあ、アレがお礼と言えばお礼かもね」と女は言って、無邪気に笑った、その拍子に、右目から涙を零した、どうして泣くんだよ、と、俺は言おうと思ったけれど、もう、口にすることが出来なかった。


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