夜の距離/塔野夏子
 
僕たちの距離が
この夜にさめざめと横たわる
月の光に傷つけられながら

この夜はあまりにも澄みわたるので
とめどない放射冷却――僕たちの
距離もまた冷えびえとして

けれど見つめている この距離が
月の光に傷つけられながら
さめざめと横たわっているのを
傷つけられるごとにかすかに波のように
震えるのを

時にこの距離の上を
数知れぬ面影の複製がひるがえるのを

とめどない放射冷却に
僕の身体もますます冷えびえと
けれど見つめている

夜が明ければ 僕たちのあいだは
距離よりももっとふたしかなもので
隔てられてしまうから



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