壊れてからがとても長い/ホロウ・シカエルボク
 
という響きがとても気になった、時刻を表示しない時計の、飾り物としての、価値、でもその店員とそんな価値について議論するのは時間の無駄だってわかっていた、だから、なるほど、と言って店を後にしたんだ、そんな面倒なプロセスを経て手に入れたこの時計だけれど、いまではどうして見つからないものをあんなに欲しがったのかわからない、そういう、熱病のようなこだわりってふいにやってくるときがあるよな、俺はもう時計のことなんかどうだっていい、時刻さえきちんと教えてくれればね―洋服屋が出してるやたら数字の読みにくいものでなければ、なんだっていい―変に長々と時計のことを考えてしまった、洗面に行って、とりあえず顔を洗った、夕刻
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