閃光うさぎ/ただのみきや
とはない
砂地での脱力と霧の鳥瞰にも似た放心とがただ点々
空虚を頭にのせて運ぶよろめく足取りだけを白日にさらしている
自らの孤独な影
どこまでも伸びて行ってやがて闇と見分けがつかなくなる影を
焦点の合うことのないまなざしの休み場とする
ペンは死者のように
老いと幼さは同居し抱き合い鳥肌をまとう
世界が重力を失くしていた
測り縄の重りはただ冷たく
座標の定まらない違和感の浮遊
ここに在って触れれない
言葉をかみしめると血の味がした
そんな錯覚を薄めるための製氷を脳は続けている
実験志願者のために臭いウミガメが小さな一つの地獄を流産した
そこでは透明度の高い作り話の底
真の悲しみが女の姿で千切れた旗を演じていた
ホチキスで留められ続けている
昨日も今日も新たな感情は裂け目だけが閃光
橋から飛び降りたうさぎはいまだ落ち続け
生きて解剖されている
(2023年1月14日)
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