「生きるのだ」/白砂一樹
 
波紋使いのように海上に立つ その足元の潮流が蠢く 一般的に適してない形式が罷り通る 迂回するルートは最早ない 私の宿願は通用しない 深い青空が私を裏切り 適切なルートは最早一切私に遮断されていることを告げる告げ主は一神教の神か? 授業をエスケープした人々の幸せそうな顔 顔 顔 俺は屈んで夢の到着を待った しかし来ない まあ薄々私も知っていたことではあったが
もう絶望にも慣れ始めたのであろうか?
波紋使いのように海上に立つ そして遙かなる水平線の方を見遣る
何もない
が 何もないことは 私の性に合っている あらゆるルートは私にのみ閉鎖されたのだ 大雪でもあるまいに
海上にもルートはなく ただ海上が在るだけだ
そして何時かは沈んでゆく日が来る それが「凱旋」の日だと信じることが 私には出来ない 希望はない 夢想と妄想だけが在る
だから私は 人生からエスケープしない 授業をエスケープした人も 人生からは逃げないだろう
「這いつくばって 必死の形相で 生きるのだ
生きるのだ」
呪文のようにそう呟きながら
「生きるのだ」

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