人魚たち/狸亭
 
ンデリヤが暗く輝く
人魚たちがずらりと並ぶ
目が一斉に入って来た男を捉える
いつも目だ 目が先行する。

夜の奥の湿った路地裏
迷路のあちこちにある黄色い家には
赤や緑のチマ・チョゴリ着た人魚たち。
かつてどこの国でも数え切れない女たちが人魚になったように
今 アジアの国々で首都の夜の底に人魚たちが群れて蠢く。

マニラ バンコク ジャカルタ ソウル タイペイ
人魚になった若い女たちよ
男がいつも男であるからといって
女がいつも女であるとはかぎらない
女たちは人魚であることを知らねばならない
女たちが人魚であるからといって
それは女たちの責任ではない
女たちが人魚であるのではなく
女たちが人魚にならされていることを知らねばならない。

人魚たちはほんとうの女になるために努力している
人魚のまま一生を終わることなく
一人の女の命を奪還しようと戦っている
大勢の家族を支えるために
まっとうな暮しを夢見ている。

世界の夜明けはこのような人魚たちの死屍の上にやってくる。
巨大なビル建ち並ぶ真昼の首都は今日も非情だ。


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