人魚たち/狸亭
夕闇が迫ると
遠い海が騒ぎ出す。
半円形の観客席に
色とりどりの衣装を着け
首から番号札を吊り下げられた人魚たちが舞台を見下ろす。
一人の男が登場する。
おどおどと観客席を見上げる。
舞台は薄暗く観客席は明るい
人魚たちが熱心に男を物色する
見詰め合う目と目の戦い。
水槽には怪しげな青い空気が揺れ
人魚たちは思い思いになまめいてガラスの向こうの男たちを見る。
大掛かりな舞台装置の中の
白い人魚 黒い人魚
白い男 黒い男 黄色い男たち
快楽が男だけのものである世界の夜
目と目 目と目 目と目が光る。
扉を開けると ビートの効いた音響が耳を聾し
シャンデ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)