クリスマスの夜に/朧月夜
少女は泣いていた。
それは、何年ぶりの涙だったろうか。
少女は、泣いていた。
物心がついて以来、
少女は己の無力を、
顧みたことがなかった。
しかし、今は涙の時だ。
少女は、決するのだった。
己が不幸が涙の原因ではない。
己が無力が、涙の原因ではない。
ひとえに、不幸は向こうからやってくる。
それは避けられない。
一向に決まらない、自分の人生、
それも、涙の原因ではない。
別れたパートナーが、
己が涙の原因ではない。
ただ、あるものがあるように、
涙は少女に降りかかってくるのだった。
少女は、己が涙の原因を顧みた。
それは、
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