幸福のありか/朧月夜
月の満ち欠けに思いをたくして、
わたしのこころは欠け、
また満ちる。
思い出のなかに、幸福はあったか?
いや、幸福などというものに、
価値はあったか?
月の満ち欠けに思いを尋ねて、
わたしのこころは問い、
そして答える。
幸福などという幻に、
取りつかれてはいないのだ。
ただ生きるように生きている。
そんなわたしの慰めは、
冬の夜空に光る星たち。
真夏のスモッグは今はなく、
夜まで清澄な空気が続く。
そして迎えられる、
天国の門に。
そこを潜り抜けることは、
針の穴を通るよりも難しいという。
最初から諦めを……と、
彼の人は言い
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)